『帰郷』(浅田次郎)は、今読むべき本だと思った。

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「会いてえ」

にやられたのは、

私の祖父がそうなっていたかもしれなかったから。

 

帰郷

帰郷

 

 

南方戦線に思いを馳せる

「会いてえ」

帰郷は、浅田次郎さんが小説すばるに連載していた短編をまとめた短編集です。

主に南方戦線の兵士の話で時期は戦争末期か終戦直後、たまに自衛官にが出てきたり遊園地で働く戦時中生まれの青年が出てくる短編があります。

こじっぺの祖父は、南方戦線からの生きて帰ってきた人の一人。学校に通っていた頃、宿題で「戦争の話を聞いて、感想文を書きなさい」と課題を出された時は、よく祖父に話を聞きに行きました。そんな程度で身近というには軽いけれど、私の中で”戦争”といえば南方戦線というイメージが強いのは、祖父から伝え聞いた話が何よりも印象に残っているからなのでしょう。近所の書店に立ち寄ったときに、吸い寄せられるようにこの本を手に取り、とりつかれたかのようにレジにより一気に読みました。それも、何かの縁だったのかもしれません。

書店に平積みにされていたこの本をめくったとき、最初に目に飛び込んだのは 

 

「会いてえ」

 

 という一言でした。前後の文脈なんて一切読んでいないのに、作中でこの一言を口にしている人物が心の底から絞り出して言っているのがわかりました。

いつもなら、戦争を題材にした本を買うときに「8月に終戦記念日があるから」「2月26日が近いから」なんて言い訳を考えて買うのに、そんなこと思う暇もなくレジに寄ってました。

 

浅田次郎さんが描く出征していった人たちのドラマ

生身の人間が戦争にいったんだという思い

それ自体を否定するわけではないけれど、戦車や戦艦の擬人化が進んで戦争というものが軽くなってきている気がするんです。私くらいの年齢なら祖父やその父が戦争にいっている世代であるはずなのに、身近ではないというかどこかのフィクションのような感じがしてきているというか。

浅田次郎さんのこの本だって、戦争からの帰郷を題材にしたフィクションだろう。

そう言われてしまえば、確かにそうです。でも、実際にあってもおかしくなさそうなそんなリアリティがあるんです。

もしかしたら、この人は私の祖父だったかもしれないし、祖母だったかもしれない。

と。生身の人間がそこにいるような感覚とでもいいますかね。

 

憲法改正だの安保法案だの言う今だから 

先の大戦時に思いを馳せるのも必要かしら

そんなの関係ないし、そもそも薄っぺらい。

と言われちゃうかもしれないけれど、そんな気がしたんです。

「これは、今この時期に読む本なんじゃないかな」と。

読めばきっと何か思うところができる。なんていうのはちょっと恥ずかしいセリフかもしれないけれど、読めば必ず何か感じます。

あんまり明るい話はないけど、夏の夜長にじっくり読むのにおすすめです。

 

 

 

 Kindle版と書籍版がありますよ。

帰郷

帰郷